「脱窒」
読み:”だっちつ”

解説

嫌気的環境を作り、嫌気性の菌を増殖させることで硝酸塩を取り除くこと(脱硝・脱窒)

現在のアクアリウムの濾過システムは、好気的な(酸素の多い)環境下で、
亜硝酸菌(ニトロソモナス)が、アンモニア(NH3)→亜硝酸(NO2)、
硝酸菌(ニトロバクター)が亜硝酸(NO2)→硝酸塩(NO3-)
というふうに変化して、蓄積されてゆく硝酸塩を水換えで水槽外に排出するという方法がポピュラーです。
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アンモニアは0.1mg/lで魚が死ぬことがあります。
亜硝酸が0.2〜0.5mg/lだと長期間の飼育は無理になります。
硝酸塩が12.5mg/l以上だと水としては汚染されている領域です。(TETRA社調べ)
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ところが、雑誌・広告等の中には 嫌気的な環境を作りメタノールなどの栄養源を供給することで、脱硝効果が得られると書いてある物があります。
水替えによってしか水槽外へ持ち出せない硝酸塩を、今度は窒素の気体にしてしまおうという期待感あふれる方式が「脱窒素細菌(= denitrifier )による脱窒素作用」です。

以下の一連の反応が脱窒素反応です。(酸化窒素を酸素と窒素に還元するしくみ)
NO3- → NO2- → NO → N2O → N2
これはすべて還元反応で、酸素が存在する条件(好気的条件)下では化学的にはおこりにくい反応です。

脱窒は溶存酸素の無い嫌気的な環境下で、バクテリアが硝酸に含まれる酸素原子を使って有機物の分解をおこなうことによって進行するものと専門家には理解されています。
同様のメカニズムで、沼地やよどんだ河川では二酸化炭素の還元が起こりメタンガスが発生したり、海では硫酸還元が起こり青潮の原因になったりしています。

従って、バクテリアが生育するに必要な(酸化されうる)有機物の供給が伴わなければ、嫌気的な環境であっても脱窒は十分に進行しないと思われています。

水槽などは活性炭等で水を清潔にしているでしょうし、好気的なバクテリアがほとんどのおいしい有機物を使ってしまって、脱窒素細菌が水槽内の硝酸塩を消費するに十分な有機物の供給は望めず、たとえ嫌気的条件をクリヤーしても、脱窒は思い通り進行してくれないかもしれません。

海洋(天然の場)で脱窒が起こる条件として溶存酸素濃度が約0.07 mg/l以下、
大学の脱窒細菌の研究者は、ポンプで空気を抜いたのち、ハロゲン(窒素だったかも)を充填させた容器内で培養しているとのこと。
アクアリウムでは溶存酸素濃度は5.0から8.0mg/lです。

はたしてシポラックス等の土管セラミックの奥で脱硝(脱窒)は本当に行われているのでしょうか?
私は疑わしく思います。

嫌気性の脱窒素細菌による脱窒など期待しなくても、植物、藻類、カビなどには「硝酸同化」作用があり、硝酸塩を種々の生体窒素化合物に利用しています。
つまり忌み嫌われる黒髭等は水槽内の硝酸塩を体内に取り込んでくれているわけです。

ありがたや〜。黒髭様。まるで風の谷のナウシカそのものですね。

解説者:iseki(井関)

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