ウイルス性の疾病による特徴と予防

 いろいろな魚種で原因不明とされている物の中にはウイルス性の病気がありますが、特徴の解っているものからその性質を知っておくのも良いと思います。
 ここではウイルス性の病気ではこんな物があるのかと知って頂き、これらのウイルス性の疾病は増える傾向がありますから注意して観察して細菌性の病気と区別がつけられればいいのですが・・・

ウイルス性疾病ではどんなものがあるのか?

A.組織細胞の増殖するもの
皮膚増殖症
リンホシスチス症等
B.退行性の病変を示すもの
IPNウイルス
IHNウイルス
腎腫脹症
伝染性膵臓壊死症
口内炎症

 どういう違いかは症状が体表から見えるものとそうでないものに分けられるようです。Aは皮膚細胞に入り細胞が増殖するもので、Bは魚体内の細胞や臓器細胞に入りその細胞が壊死するものです。

ウイルスの大きさはどれぐいか?

 大きさは細菌類で1〜3ミクロンですが、ウイルスは280-3000オングストロームの単位ですから細菌よりもの凄く小さくて電子顕微鏡で発見するしかありません。
中には数十オングストロームのものも存在しているようで、発見は極めて難しいようです。

個々症例

A−1「皮膚増殖症」

 鯉や金魚やコイ科での発生が見られます。皮膚(真皮)細胞の増殖が部分的にあり、色は乳白色でその部分が盛り上がってきます。侵攻や経過は穏やかですが知らないうちになんか白いものが着いていると言う感じで発見されます。直ぐ死ぬと言うことはなく、食欲もあります。自然と治癒することもありますから様子を見てからその部分(を少し削り取り)にイソジン液(うがい薬)を塗布して下さい。
患部を削り取る場合はその部分が斑紋の場合は注意して行って下さい。まず、削り取らすに塗布してから治らない場合に削って見て下さい。その理由はウイルスが細胞に入り込んでいますが患部は毛細血管が走っているからです。

 その他の治療では、砒素剤の1%液を注射するのが良いらしいです。この場合は1〜3週間で治癒したとしています。

A−2「リンホシスチス症」

 この病気は淡水、汽水、海水魚で発生します。特に海水魚での報告があります。
皮下細胞の異常増殖で皮膚が部分的から広がって盛り上がって来てキャベツの葉っぱのような体表になるそうで、表面に透明な膜(細胞膜)が生じてくるとリンホシチス細胞であるとしています。この症状も進行はゆっくりとしています。

 乳剤が効果的であるようですが詳しくは知りません(^^;

B−3「IPNウイルス症」

 このウイルスは強力ですが、鯉や金魚では見かけません 当然熱帯魚もです。
マス類の稚魚や幼魚では死亡率が高いようで、対策も難しいです。
このウイルスは水の中で2週間以上も感染力を持ち続けますし、熱水60度で1時間の処理でも死なないのです。(一般的なウイルスは60度で死滅します。)しかもウイルスは卵にも受精児に入り込むようで、孵化してから発病します。

 特徴は水温9度以下では発病しないのですが、12〜13度が最も発生するようで、それも外見上はほんの少し腹部が腫れているだけで解らないそうです。
日光や殺菌灯の下でもなんともないのでビックリするぐらい抵抗力を持っているウイルスなんです。>とんでもないウイルスだ!!
でも大きくなった魚では、被害が無いかあっても軽いようです。

 対策ではヨード剤(イソジン液200倍液)での15分薬浴で対処するぐらいです。
イソジン液はIPNウイルスを殺すことが出来ますが、卵に入り込んだウイルスには効果が及ばないし細胞にも入り込んでいますから対策が効果的とならないようです。ウイルスの仲間でも更に小さい部類に入ります。

 症状は腹部が少し膨らむ程度で外見上は分かり難く、急に死亡します。初めて数匹死んでからわかり、なんだろうと思っている内に翌日もまた死ぬというようになり、止めることが出来ないままにほとんどが死亡していきます。

 死亡する前の症状では、旋回して泳いだり、不規則な泳ぎで肛門から糞が出たまま泳ぐことがあるそうで、体色はやや黒くなって鰭がスレているものがでて、肝臓の貧血があり、すい臓の病変が認められます。

 このような強力なウイルスに対してどうしているかといいますと、耐性を持った魚を作ったり、水温9度で抵抗性をもつ魚体の育成をしたり、このウイルスを保菌しない魚から繁殖したりしています。池や用具の消毒は、クレゾール石鹸液200倍液やホルマリンで行います。

B−4「IHNウイルス症」

 伝染性の強い感染力を持つウイルスで中途半端な消毒では防げないとされています。ただ弱点も必ずあると思って調べてみました。

 感染魚は、マス類の他にサケの稚魚で見られていますが、生後3か月を過ぎた魚では抵抗性を持ってくるようでさほどの被害が出ていない、更に大きくなった魚では感染しても発病しなくなるようです。

 症状は稚魚の筋肉部分にV字型をした出血(が無いこともある)があり、急激に死亡する。感染から1〜2週間で発病し1か月でほぼ全滅することがあるようです。
腎臓の貧血や出血や鰓の貧血が認められる このウイルスはIPNウイルスと異なり卵の中までは入り込まないようですが、卵には付着している可能性が高いので(親魚は保菌魚で特に雌親が多く保菌しています)イソジン液200倍液での薬浴を15分すればウイルスを殺せます。しかし、徹底した管理をしないとウイルスが入ってしまうことがありますから中途半端な管理では防げないようです。

B−5「伝染性すい臓壊死症」

 鰻類で見られており、感染は生後2か月までの稚魚のみで突発的に高い死亡率を示す病気です。体色は黒化していき眼球が突出、腹部の膨張、胸部の出血と進みます。旋回して泳いだりして水底に横たわって死にます。肝臓やすい臓は貧血しており、細胞の壊死が認められます。

 特徴としては、低温では発生が少なく被害がないようです。が、治療法が無いのが難点です。これも耐性を持つ魚を作るか見つけだして対応するしかないようです。

ウイルスに効く薬

ウイルスに効く薬ではイソジンがあります。皆さんも良くうがい薬として使用していると思います。ヒトはウイルスに多く襲われていますが抵抗性を持って来ますね それは風邪ですが、ウイルスも更に形を変えて我々を襲ってきます。

 魚に対してもイタチごっごですが怖い存在ですからこの薬も用意しておかれるといいですよ>ヒトに使うのが主ですが(^_^)

最新研究で参考になる情報

 東京水産大学の岡本助教授によれば
「コイの血液に含まれる好中球(白血球の一種)という細胞がウイルスに感染した細胞を破壊するキラー細胞として働くことを突き止めた」としています。
「餌の工夫などによりこれら(好中球)の力を高め魚の病気に対する抵抗性を高められる」「コイの好中球はウイルスが感染した細胞を見つけるとそれを飲み込んでしまう、飲み込めないものは過酸化水素を発生して相手を破壊する」などで病気に強い魚の育成ができることになりそうです。コイを飼育している方には心強い福音となるかも知れません

 ヒトの場合ですが白血球の補強及び低下防止効果が期待できそうなものとして、ある方から紹介していただいたものを参考までに記しておきます。

「餌に配合させる目的で入手する場合でしたら、粉末ないし顆粒が良いように思います。顆粒剤は以下のメーカーから発売されています。

など、数社ありますが、漢方薬名と顆粒と告げれば確定できます。
でも、普通に入手できるかなぁ。
餌に配合してほとんどを食べてくれる場合は、50〜60Kgの体重で一服分として魚の体重で割引してみてください。
食事ではなく、水槽に混ぜる場合は、抗生物質などと同様に考えればいいのではないかと思います。」

追記、イソジンの使用について、卵生の魚では消毒で効果があるのですが、グッピー等の卵胎生魚では効果期待できません^^; 薬浴はある程度の消毒はできますが絶滅は難しいので細菌性の薬を使用して魚体内の抵抗性を高めることも必要と感じますからオキソリン酸、フラン剤系、サルファ剤系の主成分が入った観賞魚薬を常備して於くといいでしょう(細菌性の薬は薬品データのところを参照して下さい)

参考文献

トップページへ戻る