よしを’S濾過話(基礎編)

私が今まで色々なところで得た情報と、自分の経験等を元に濾過に関するノウハウをまとめてみました。
ここでの内容は原則淡水水槽が対象の話と受け取ってください。私は海水分かりませんので(^^;)
それからここの内容は全て私の私見であり、間違いも多々有るかと思いますがもし「そりゃ変だぞ!」という内容が有ればどんどんご意見くださいませ。

ここではアクアリウムを始めたばかり(またはこれから始めようと思っている)人を対象に、現在熱帯魚用水槽で実施されている濾過について説明します。
もう既に熱帯魚を死なせずに飼育出来ている人にとっては当たり前の話となるはずです、もしそういった方でもう少し踏み込んで濾過のことを考えたいなら次の「よしを’s濾過話(マニア編)」をご覧ください。

20年ほど前、熱帯魚を飼育することが流行した頃に常識とされていた熱帯魚の飼育方法は、1ヶ月に1回は必ず濾過装置を含む(濾過装置と言ってもその頃はグラスウールをセットしたブクブク程度)水槽器具全部を洗剤や熱湯を使って綺麗に殺菌する事だったそうです。
これを読んで笑える方は一応生物濾過についての知識のある方だと思いますが、私も初めて熱帯魚を飼った頃はこれを言われても何がいけないのか分からなかったでしょう。
水質検査薬で水質をチェックして亜硝酸濃度が上がっていると水が綺麗でないと思い、水槽を丸洗いしたり濾材もごしごし洗ったりしました(^^;)

とりあえず、ここではアクアリウムの濾過についてほんとの初歩から説明します

現在のアクアリウムで行われる濾過については大きく分けて次の2通りの濾過が実施されています。

  1. 物理濾過
    目に見えるほどの大きさのゴミを物理的に漉し取る。
    水槽の水をゴミごとスポンジや綿の中を通すことによってゴミを取り除く。
  2. 生物濾過
    アンモニアや亜硝酸といった毒素を細菌の活動によって分解させ無毒化する。
    (ここでは主に好気性濾過細菌による生物濾過を説明します)

物理濾過については特に知識が要るわけでもなく、現在の水槽セットの濾過装置を稼働させていれば必ず実施される濾過ですし、底にたまった水草の枯れ葉を人間が取り除いたりするのもれっきとした物理濾過です。
ここでは物理濾過についての説明はこれぐらいにして次に生物濾過について説明します。

生物濾過とはその名の通りバクテリアという生物を使ってアンモニアや亜硝酸を分解し無毒化させる事を言います。
バクテリアを使うなんてバイオテクノロジーって感じがしてとっても難しそうですが、全然そんなことは有りません。
バクテリアの住む場所を作ってやりちょっとした注意を守ればバクテリアが繁殖してくれます。

バクテリアの住処になる物
これは結構どんな所にも住み着いてくれます次のような部分です。

  1. 上部濾過装置のスポンジ濾材
  2. 外部濾過装置や上部濾過装置に入れた濾材
  3. 底床(底にひいた砂や砂利)
  4. スポンジや砂利ウール等をセットしたエアリフト式装置(スポンジ付きのブクブク)

バクテリアが住み着く条件

必要となるバクテリアは条件を整えてやれば空気中や水道水から自然にやってきて住み着いてくれます。
(通常の熱帯魚を飼育する事を対象にしたバクテリアについて)

  1. 温度が高温すぎたり、低温すぎたりしないこと。
  2. 常にバクテリアの餌となるアンモニアや亜硝酸が存在すること。
  3. 常に酸素が有ること。
  4. 塩素など熱帯魚に対して害があるような薬品にさらさないこと。

と言うことで、普通に熱帯魚を飼育している水槽の水ならこの条件を満たしているはずです。
その水を先ほどの住処となるところに常に通してやれば良いのです。

さてここまで来れば初めに説明した20年前の熱帯魚飼育方法の何が間違いかが分かっていただけると思います。
そう、折角繁殖した濾過バクテリアを全て死滅させる事を繰り返していたと言うことです。

では、ここから新しい熱帯魚水槽をセットする場合の濾過バクテリアの繁殖のさせ方について順を追って説明します。
これを完了することで「濾過の出来上がった水槽」が出来るはずです。

STEP1水槽と濾過装置のセット

水槽と濾過の仕組みを決定したら水槽をセットします、水槽のセットの仕方はここでは省略します。
使用する濾材については買ってきたセットに付属していればそれを使って問題ありません、活性炭はその吸着能力を使っての物理濾過なので私は使用しないことをお勧めします。
なぜなら活性炭の有効期限は1〜3週間程度だからです。その後使用し続けても生物濾過としての能力はかなり低く3週間程度で交換しなければいけません、それならば少しでも多くの生物濾過用濾材をセットした方が良いからです。
水槽立ち上げ当初必ず水が白く濁りますが、それも生物濾過がちゃんと出来上がると水は綺麗になります。

ものの本によればここで「魚を入れずに10日ほど水を回して水を作りましょう!」なんてばかげたことを言っていますが、これは大嘘です!
前に話したように濾過バクテリアを繁殖させるにはその餌となるアンモニアや亜硝酸が必要です、従って何も入っていない水槽の水を濾過槽装置に循環させても濾過バクテリアは絶対に繁殖しません。
せいぜいセット初期の水槽の水漏れは無いかとかポンプやモーターからの油分のしみだしが無いかと言ったテスト的稼働確認にしかすぎないと思います。

STEP2パイロットフィッシュ

さていよいよ水槽のスタートです。
まず濾過を立ち上げるには何度も言うようにバクテリアの餌となるアンモニアや亜硝酸が必要になります。
そのため通常は魚を飼育します。
ただこの時点で飼育する魚をパイロットフィッシュと言います。
安くてなるべく丈夫な魚ならなんでもかまいません、10匹何百円で売っている魚が良いでしょう。
安いと言うことは比較的丈夫という事だと考えて良いでしょう。
最近ではネオンテトラ等も10匹800円程度で売っていますが、昔はカラシン類は水質の悪化に弱いと言われていましたが、私はネオンテトラやカージナルテトラでもパイロットフィッシュになると思います。
パイロットフィッシュは濾過が出来上がっていない、アンモニアや亜硝酸が沢山存在する水で生活させられることになりますから、それほど多くの数を入れてはいけないと言うのが注意点です。
60cm水槽で小型の魚10匹程度が限度だと思います。
ついつい、綺麗な魚を沢山入れたくなりますが、それは濾過が出来てからのお楽しみとしてここではぐっと我慢です。
多くの魚をこの時点で入れると水質の悪化でいくら丈夫な魚でも死んでしまいます。
この時点でアクアショップに相談すれば種砂と呼ばれる濾過バクテリアの繁殖した水槽の砂を分けてくれる所もあります、そういった種砂をショップや友人から手に入れればバクテリアの繁殖もかなり早くなります。

最近はバクテリアの元のような商品が色々と発売されていますが、そういった物もこの時点で一度だけ使用するのも良いと思います。
ただし、これらバクテリアの元は一旦濾過が出来上がった水槽での使用はしない方が良いでしょう、なぜなら濾過バクテリアはその家その家の水槽環境に一番適した物が繁殖し住み着きます、そこへ種族の違う濾過バクテリアを外から入れることによって、それらのバクテリアがお互いを敵だとして殺し合う事も起きかねないのです、その上販売されているバクテリアの元はバイオテクノロジーで作られた物であり、3世代以上の自家繁殖が出来ないように作られており、それらのバクテリアで濾過をまかなうためには常にそのバクテリアの元を使用し続けなくてはならないという、まさに中毒症状とも言うべき現象に陥るという話しも聞きます。
自分の水槽で自然に繁殖するバクテリアこそもっとも大切なのです。
ただし水槽立ち上げ初期のみ自家バクテリアがゼロですから、場つなぎ的にバクテリアの元を使おうと言うことです。

STEP3濾過バクテリアの完成まで

パイロットフィッシュを飼育し出すと濾過が出来ていない水槽ではすぐにアンモニア濃度が上昇し出します。
魚は猛毒の水の中で生活させられますから、その濃度が上がりすぎないように人間が水換えをする事で、水を綺麗にしてやります。

この期間の水換えは2〜3日に1度1/2程度の量を換えましょう、もちろんパイロットフィッシュが多めに入っている水槽などではそれ以上の頻度で水換えしましょう。

3日から1週間程度でアンモニアを亜硝酸に分解するニトロソモナス属という種類の濾過バクテリアが繁殖します。

今度はアンモニアは存在しないものの亜硝酸というこれも毒性のある成分が増えていきます。
ニトロソモナス属が繁殖するまでの期間は比較的短い(水槽をセットしてバタバタしているうちに過ぎる)ですが、これから亜硝酸を分解するニトロバクター属が繁殖するまでが我慢の日々です。
亜硝酸試験薬を購入し毎日チェックして濃度が上がっていればすぐに水換えします、この期間もだいたい2〜3日毎の換水が必要です。

亜硝酸濃度が上がりだしてから濾過が出来上がり、亜硝酸濃度が下がるまで短くても3週間、長けれが2ヶ月程度を要します。
その間亜硝酸濃度をチェックして換水を繰り返します。

ある時を境に亜硝酸濃度がぱったりと下がります、劇的に変化しますので是非とも亜硝酸濃度をこまめに測って変化を見極めましょう。
亜硝酸濃度がぱたっと下がったら濾過の完成です。

STEP4濾過完成後のバクテリア維持について

基本はバクテリアの住み着く条件の通りです、塩素が除去できていない冷たい水で濾材を洗ったりするとバクテリアが死滅します。
寒い冬に上部濾過装置のポンプを停止して半日も放置すると上部濾過装置内のバクテリアが冷えて死んでしまいます。
濾材も汚れすぎると濾過能力が下がりますので、定期的な掃除は必要ですがその際も、水槽の水半分程度をバケツに取りその中に濾材を入れて軽くかき混ぜる程度で汚れを落とします。
濾材も全部を一度に洗わず、下半分を取り出して軽くすすぎ元々上にあった分を下に入れて、今洗った物を上に入れる等してバクテリアを無くさないよう気を付けます。

小技集の「濾過装置の掃除のタイミングと方法」も参考にしてみてください。


これにて一通りの濾過話(基礎編)は終わりです、この後に脱窒と呼ばれる嫌気性濾過の話をまとめた「よしを’s濾過話(マニア編)」も有りますので興味のある方はご覧ください。

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